雌牛は肉質や味わい、栄養価などさまざまな観点から見て優れており、精肉業界でも注目されています。しかし管理の難しさや知名度から、雌牛の流通量は限られており、希少性が高いことも事実です。
今回は雌牛の美味しさや雄牛との違いについて詳しく解説します。
雌牛とは
雌牛とは、その名の通り雌(めす)の牛を指し、肉食用から乳牛用、繁殖用として広く飼われています。
特に食用肉としての観点で見ると、以下のような特徴が存在します。
・脂肪が付きやすくきめ細かなサシが入っている
・筋肉量が少ないため肉質が柔らかい
・脂の融点が低くとろけるような味わいがある
雌牛は柔らかく上質な脂を有していることから、精肉店や飲食店でも重宝されています。
しかし雌牛は発情期が存在するほか、体を大きく育てることが難しく、畜産農家では管理が難しい側面もあります。
そのため食用牛市場では比較的管理しやすい雄肉が広く流通しており、雌牛の美味しさが広く知られていないことが事実です。
雌牛の条件とは
雌牛として精肉業界で扱われる牛の条件として、繁殖の経験がなく一度も出産していない雌であることが挙げられます。
繁殖や出産を経験していない雌牛は、成長が早く若い状態で出荷されるため、肉質が柔らかい一方で体が小さい個体も多いです。また雌牛は発情期の訪れから管理が難しいため、希少性が高いことが特徴です。
しかし雌牛の持つ肉質の柔らかさや旨み、とろけるような脂肪の入りは国内外でも高い評価を受けています。
その美味しさから松坂牛をはじめとした高級ブランド牛は、上質な雌牛のみを松坂牛として認めているほどです。
そのほか上質な肉を提供する飲食店や精肉店、卸売店でも雌牛は高級品として扱われています。
雌牛の格別の味わいを楽しみたい方は、ぜひ取り扱いのある精肉店や飲食店でその美味しさを堪能してみてください。
雌牛の読み方・別名と意味
雌牛は「めうし」と読み、古い読み方では「めうじ」と読まれることもあります。
言葉としての意味はそのまま雌(めす)の牛を指しますが、精肉業界では特に繁殖や出産の経験がない雌の牛のみを雌牛と呼びます。
食肉として雌牛を堪能したい場合は意味や肉の特徴をよく確認したうえで購入しましょう。
また精肉業界における雌牛は、繁殖や出産をしたことがないという特徴から、「処女牛」「未経産牛」と呼ばれる場合もあります。
いずれも同じ意味を指すため、飲食店や精肉店で雌牛を購入したい際は、それらの別名で判断するのもおすすめです。
なお雌牛の対義語として、雄(おす)の牛は雄牛(おうし)と呼びます。
精肉業界では雄の牛は幼年期に去勢して食用肉として育てることが管理効率に優れているため、雄牛を「去勢牛」と呼ぶ場合もあり、国内でも広く流通しています。
食用として牛肉を選ぶ際は、合わせて覚えておきましょう。
雌牛と雄牛の違い
食用肉としての雌牛と雄牛の違いについて紹介します。
雌牛(未経産牛) | 雄牛(去勢牛) | |
肉の柔らかさ | 上質な脂肪が入り柔らかい | 筋肉質で硬い |
肉質 | きめ細やか | 個体差がある |
肉色 | 小豆色に近い | 赤色〜小豆色 |
個体の大きさ | 小さいものが多い | 大きいものが多い |
流通量 | 少ない | 多い |
雌牛は融点が低く栄養価の高い不飽和脂肪酸が多く含まれており、なめらかな舌触りの柔らかい肉質が特徴です。
旨みと舌触りに優れた食肉ではありますが、色味は小豆色に近く見栄えが良くないこと、流通量が少ないことから購入できる場所が少ない側面もあります。
対して雄牛は飼育が容易であることから流通量が多く、赤色で見栄えのきれいなものもあり手軽に購入できます。
一方で筋肉質で硬く、肉質にも個体差があるため、味わいにおいて雌牛に劣る場合が多いです。
味わいを重視して牛肉を選ぶのであれば、ぜひ雌牛に注目してみてください。
国産牛と輸入牛の違いは?
食肉を選ぶなら、雌牛であるかどうかはもちろん、国産牛か輸入牛かの違いについても注目しましょう。
国産牛は日本で飼育加工された肉を、輸入牛は海外で飼育加工されて国内に渡ってきた肉を指します。
特に輸入牛は流通量が多いため、味を重視するなら国産牛を、価格を重視するなら輸入牛を選ぶ方も多いのではないでしょうか。
国産牛はきめ細やかで柔らかな肉質が特徴で、さらに国内で飼育・加工されているため、鮮度の良い肉を購入できる点も魅力です。
一方で生産量が減少しており価格が高いため、高級品として認識されている傾向にあります。
対して輸入牛は生産量や流通量が多い一方で、海外から渡ってくるためと畜から流通までの期間が長く、肉質も硬いため安価で手に入れやすい一方で風味は劣る特徴があります。
これは雌牛の場合も同様です。
より味わいを重視するなら、国産牛の雌牛の購入を検討しましょう。
雌牛が雄牛よりも美味しい理由はなぜか
雌牛は雄牛よりも美味しいとされていることには、肉質から流通量の違いまでさまざまな理由があります。
ここでは、雌牛がうまいとされている理由を3つのポイントで解説します。
美味しい牛肉をお求めの方は、合わせてご覧ください。
希少価値が高い
雌牛は食用肉としての流通量がごく限られており、非常に希少価値が高い食肉です。
その理由として、以下が挙げられます。
・繁殖経験のない雌の牛に限られるため個体数が少ないため
・発情期が訪れるため管理が難しいため
・体が小さい個体が多く1頭から取れる量が限られるため
・仔牛を生むためにすべての雌牛を出荷することはできないため
雌牛は繁殖経験のない雌の牛のみを指すため、個体数はごく限られます。
さらに雌牛は発情期が訪れると、気性が荒くなったりストレスを溜めやすくなる場合もあるため、管理には細心の注意を払わなければいけません。
また繁殖前に食肉として出荷する必要があり、体が小さな個体も多く、1頭あたりの精肉量は限られてしまいます。
さらに畜産農家では牛の頭数を増やすため、仔牛を生む雌牛を確保する必要もあります。
すべての雌牛を出荷することはできないため、出荷できる雌牛の頭数が限られてしまうことも、雌牛の希少価値が高い理由です。
対して去勢牛は筋肉質で肉質が硬い側面はありますが、体が大きくなりやすく、去勢することにより気性が穏やかになる傾向にあります。
そのため管理の難易度が下がり、多くの畜産農家で扱われています。
この特徴の違いにより、国内外で流通する牛肉は雌牛よりも雄牛(去勢牛)の数が多く、価格も入手難易度も去勢牛の方が下がるのです。
雌牛の脂が体に良い
雌牛がうまいとされている理由として、良質な脂が多く含まれていることが挙げられます。
雌牛の脂肪には融点の低い不飽和脂肪酸が多く含まれています。
融点が低ければ、弱い熱でもすぐに脂肪が溶け、口に入れるとなめらかな舌触りを楽しめるため、味わいの点で見ても非常に優れていることが特徴です。
さらに不飽和脂肪酸はパルミチン酸やステアリン酸、オレイン酸をはじめ豊富な栄養素を含んでいます。
そのため人間に欠かせない栄養素である一方で、体内で合成することはできません。
つまり牛肉をはじめ体外から摂取するほかない栄養素であるため、牛肉は栄養価の観点から見ても非常に優れた食材だといえます。
もちろん不飽和脂肪酸は雄牛(去勢牛)にも含まれていますが、脂肪の付きやすさや不飽和脂肪酸の含有量は雌牛に軍配が上がります。
そのため雌牛は肉質の柔らかさだけでなく、栄養価の観点から見ても非常に旨みのある食肉だといえます。
熟成されている
牛肉はそのままでも十分に美味しい食肉ですが、熟成(エイジング)するとより旨味が増します。
雌雄にかかわらず、牛肉はと畜するとすぐに死後硬直が始まり、筋肉がより硬くなります。
しかし熟成させると、牛肉の持つ酵素により筋肉が柔らかくなり、さらにタンパク質がアミノ酸をはじめとしたうまみ成分へと変わるのです。
この効果は元々肉質が柔らかい雌牛でも起き、柔らかく栄養価の高い肉質がさらに柔らかく旨みも増し、非常に旨味のある精肉へと育ちます。
さらに雌牛は深い甘みやコクを持つことも魅力ですが、そこにアミノ酸が生まれればさらに味わいに深みが増すため、雄牛とは格別の風味を持つ精肉となるでしょう。
旨みや肉質、さまざまな観点から見ても素晴らしい特徴を持つ雌牛ですが、そこには畜産農家や精肉店の高い技術も欠かせません。
雌牛にストレスを与えないよう適切な環境や飼料を準備して飼育するほか、熟成においても一定の温度湿度を保って進める必要があります。
さらに精肉店や飲食店に渡ったあとも、雌牛の持つ肉質の柔らかさや脂肪の旨みを活かすための調理法や管理方法を検討しなければ、雌牛の魅力は半減してしまいます。
そのため雌牛の美味しさを堪能するのであれば、「雌牛であること」はもちろん、適切な管理・解体・調理がなされている畜産農家や卸売店、飲食店であることにも注目することが大切です。
乙川畜産食品は高品質の食肉卸をしています
雌牛は繁殖経験のない雌の牛を指し、非常に柔らかく旨みの多い肉質として広く注目されています。
一方で管理が難しく、流通量がごく限られているため、希少価値の高い精肉であることも事実です。
雌牛の旨みは適切な管理・流通・調理によっても左右されるため、「美味しい雌牛を食べてみたい」と考えている方は、流通経路にも注目してみてください。
乙川畜産食品では、消費者のニーズに応えた食肉を提供することを信条に、昭和50年より高品質の食肉を卸して参りました。
扱う食肉を徹底に管理し、高い安全性とお求めやすいコストで食卓に届けられるよう、研鑽を重ねています。
さらに精肉は卸売だけでなく、直営の焼肉店「焼肉乙ちゃん」や通信販売でも取り扱っています。
雌牛をはじめ美味しい食肉を堪能したいと考えている方は、ぜひ乙川ブランドの精肉をお好みの食べ方で味わってみてください。